こんな時間が続く訳がないとわかっていても
8/30 (行きのバス車内にて)
「シューシュ!」「ヒロ!」「ヒヤーム!」
名前が飛び交う。
シューシュと呼ぶのはミミとアーデル、ヒロと呼ぶのはブロンド、ヒヤームと呼ぶのはサーレム。
頼むから統一してくれないか?
バスに揺られながら、シャツの胸ポケットを気にする。今朝ボスに貰った桃が二つ入っているのだ。その場で食べても良かったがムハンマド(陽気じゃない方の)に貰ったキャラメルが口に入っていた。
家に帰ってから食べようと事務所の机に置いて出て行こうとしたらアーデルに「なんで持っていかないんだ?」と聞かれ「後で家で食べたい。だから事務所に置いていきたいんだ。ところで今日は事務所に戻るのか?」と言ったつもりだが「持っていけオレ食っちゃうから。」みたいなことを言われる。こんな簡単な意思疎通すらできない。
ということで食べるタイミングが掴めず胸ポケットに入れて連れてきたのである。
バス車内。通路をはさんで隣にはアハマドとスレイマン。この二人は仲良しなのかいつも一緒にいる。面白いのが顔も背丈も格好も似ている。
「顔が似てるけど、あなた達は兄弟か?」
「そうさオレたちはツインズさ!」
優しいジョークに皆笑う。
バスが止まる。
着いたと思い、降りていく職員についていこうとするとアーデルが「違う違うここじゃない。」「え、そーなの?」すかさずスレイマンが「パパ以外についていっちゃだめじゃないか!」車内爆笑である。
再びバスが止まる。
スレイマンや降りていくブロンドが「ヒロ!ヤッラ、ヤッラ(ホレ、行くぞ)」と声をかける。「え?行くの?」ついていこうとするとスレイマンが「だからパパ以外についてっちゃダメだって!」と笑いを堪えながら言う。
3回目バスが止まる。隣のスレイマンが真顔で「ここだ。降りろ。」というから降りようとしたらアーデルが「違うって!」と止める。大ウケである。
上手いなこんちきしょー。(いや、私がマヌケなんだな…。)
そんなこんなで4校目ヴァウォンというアジュルン城があるカラア山の反対側の村の小学校。
パパの後ろをえっちらおっちらとついていく。今はそれしかできない。
パパの前を歩ける日は来るのだろーか?
校長室に通され校長(女性)と話をする。ここで初めてアラビックコーヒーではなくネスカフェがでた!(カルダモン入りのアラビックコーヒーはクセがあって粉っぽくて個人的に苦手である。ところ変ればコーヒーも変わる。)
話を聞くと、美術の先生が転勤してしまい今後美術の授業がないそうだ。え!?来た意味ないじゃんと思いアーデルの顔を見たら全く同じ顔をしていた。知らなかったんだね。
とても残念だった。決してネスカフェが出たからではない。校長のアラビックが聴き取りやすかったからだ。
惜しいなぁ。
(学校内では禁煙が叫ばれていた…。)
帰りのバスの中、ボスの悪口で盛り上がる。上に立つ人間とはこういうものなんだろう。「どんな親でも親という立場からは子に満足させる教育はできない。」どこかで読んだ一節を思い出す。
同じように全ての部下を満足させるボスはどこにもいないだろう。
「 いい奴じゃないってのはアラビックでこう言うのさ!」
「変な言葉教えないでよ!悪い言葉は覚えちゃダメ。」男性陣にからかわれ女性陣に庇われる。この構図はどこに行ってもいくつになっても変わらないなぁ。(本音は良い言葉も悪い言葉も知りたい。)
ヨルダンの道は凸凹が多い。(凸が多いと言った方が正しいかな。)
(ヨルダンの道路にはこんな標識がある。調べてみたらスピードバンプだそうだ。道路によって標識の凸の高さが違っていたりする。)
バスが揺れたタイミングで口が開いていたペンケースから一斉にペンや消しゴムが飛び出してしまった。拾おうと席を立とうとすると「ウゴドゥ!ウゴドゥ!」(座ってろ!座ってろ!)と言われる。近くに座ってたアーラムが一つ一つ拾ってくれた。
「ユスラモ、ユスラモ、(相手が手を使ってくれたときのありがとう。)シュクラン、シュクラン(ありがとう、ありがとう)」と前傾になって貰おうとしたら今度はシャツの胸ポケットに入っていた桃やペンが飛び出した。皆んなに笑われ「ウゴドゥ!ウゴドゥ!」から「イルミー!イルミー!(投げろ!投げろ!)」コールに変わった。
これには自分でも笑ってしまった。
明日からイードで連休だ。アジュルンでたった一人の日本人としては、しばしこのバスに乗れないのは少し寂しくも思った。
(ボスに貰った桃。見た目は桃か?と疑う色味だけれど驚くほどに味は本当に桃だった。いや、桃だから驚くことはないんだけれども。)