マイナーコードな日

9/1 イード初日

 朝4時アザーンが鳴る。普段は起きないが、いつもより長く騒がしくて目が覚めてしまった。なんだか近所も騒がしい。が二度寝を決め込む。

 

朝食後、ソファーで横になる。昨日のことや随分昔のことや今後のことなど時間軸を行き来しながらウトウトする。眠気に勝とうとする自分に(だって生理現象にかなうワケないじゃないか。それが自然の摂理ってモンだろ。)と圧倒的に負けようとする自分。

山に囲まれ朝晩の冷え込みは地元を思い出す。眠気とともに近所の喧噪が家族の喧噪に聞こえる。ほんのつかの間の、ほんの一瞬の安堵感。耳と脳がアラビア語を認識すると同時に自分の居る場所をも再認識する。

 

このままくさくさしてるのもなぁ。何か見れるかなと期待しながらイードの町へ出る。

ところが「ひつじ」の「ひ」もいやしない。

いるのは殆どシャバーブ。(ティーンエイジャーの男の子達。女の子はシャバーバートゥ。シャブ、シャッバとも呼ばれるそうだ。ちと日本ではいろいろと誤解を呼びそうだ。)

横切るたびに「ハロー!ニーハオ!シェイシェイ!」と大声で叫ばれる。日常茶飯事だ。大人数になると強気になるのはどこでも一緒だなぁ。

新しくみつけた酒屋に入る。ヨルダンはイスラム文化の国なので酒屋は少ないしお酒は高い。ましてや田舎のアジュルンに酒屋なんてないだろうと思っていたら、中心街だけでも今のところ3件発見した。(酒屋にばっかアンテナが反応するのもなあ…。)

ぐるりと品揃えを見ていたら奥から店主のおじさんが出てきた。「どこから来た?何人だ?いくつだ?梨食うか?」梨を齧りながらお互いの暇を潰す。

「ところでムスリムの人はお酒飲まないから買いに来ないでしょ?」と聞く。「いや、うちの売り上げの95%はムスリムで5%はクリスチャンだ。」「え!?うそでしょ。」「ホント、ホント」私は私の訳を信じられないので3回くらい英語で聞き返す。何度聞いても同じ答えだった。

 

帰宅後、大家に家賃の事を聞きにいく。「そんなこといいからマンサフ食ってけ!」とマンサフを御馳走になる。羊の肉が乗っかっていた。「これは今朝捌かれた羊だ。」

「バーバ。羊が捌かれているところを見たいんだけど。」「なに言ってんだ。羊を捌くのは今日の朝だけだぞ。」「え…。」

だからあんなに今朝は騒がしかったのか…。初のイード、不発に終わる。

いい迷惑だよなぁなんて眺めていた羊が胃に収まっていく。

 

玉ねぎを取りにバーバとベランダへ。先を歩いていた普段穏やかなバーバが突然、親の敵の如く「ハラース!」と叫びながら、ちり取りと箒で何かを捕まえていた。

見るとカメレオンだった!ヘルヴァ(カメレオン)はベランダのブドウを食べてしまうそうだ。それは私も困る。とても困る。

 

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(手がミトンみたいだ。)

 

 

今日はカメレオン。この前は子猫が死んでいた。(始終を見てしまって、かなり気が滅入った。)

ここのベランダはいろんなドラマが繰り広げられるなぁなんてぼやっとしていたらザクロの木にハチが2匹並行に飛んでいる。

つがいだろうか?いや、牽制し合ってるだけかもしれない。自分の心情によって見方なんて簡単にいくらでも変わる。

夕暮れ時、二階からたどたどしくも懸命にコーランを音読する鼻にかかった声変わりをしていない優しい声が聴こえた。

 

 

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(後日見つけたイードの名残)