なんで猫じゃなかったのかなー

飴屋法水『彼の娘』より

くんちゃんはさあ、いつから人になったのかなー。

なんで人になったのかなー。

くんちゃんはさー、なんで猫じゃなかったのかなー。

(「小学校が始まる日の朝」飴屋さんの娘さんがこぼした言葉。)

 

8/27 勤務初日

朝起きて布団の中でうだうだする。気分は夏休み明けの小学生だ。

コーヒーを飲んで、もさもさと朝食を食べ、もさもさと準備をする。

新しいシャツに袖を通し、いつもよりは少し小綺麗な(あくまでも自分の基準の)格好をする。

大家に挨拶を済まして家を出る。

同じように出勤するため歩いている警察官。背筋が伸びていて爽やかだ。

ヒジャブを被った頭にカゴを乗せ器用に沢山のブドウを運ぶ老婆。

朝の風景はこんな感じなのかと思いながら歩いていると店の窓に映った自分と目が合う。いつもよりはと思っていたが、普段とそんなに変わらない姿に少しがっかりし更に背を曲げて歩く。

行ってしまえば何とかなるさ。わかっていても気が重いのはどうしようもない。

教育局までは家から徒歩20分くらいだ。アジュルンの町を歩くのはちょっとした登山だ。坂道をぐんぐんと登って教育局へ着く頃にはだいぶ汗をかいている。

ボスのところへ挨拶に行き、カウンターパートを待つ。朝からいろんな人がボスの部屋に来て話をする。信頼が厚いのだろう。

早速カウンターパートと 学校を巡回する。

新学期はイード明けの9/5からなので生徒はいない。

小学校へ着くと新学期の準備で先生達は忙しそうだった。健康そうな女性の校長先生や美術の先生(少し厳しそう…。)やらアシスタントの女性達と話をする。校長同様、健康的な印象の学校だ。早速校長室に通される。

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(1校目。前を行くのはカウンターパートのアーデル。)

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(ここでも愛されるアブドゥラ国王)

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(校長室って勲章が好きだよなー。)

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(美術の授業作品。戦争画と呼んでいいのか。これ今日本の学校でやったら相当怒られるな。戦時中の日本もこういうのはあったんだろうか?)

 

いろいろと学校内を見て回る。

それよりも気になったことは先生達(女性)が自分の子どもを連れて職場に来て仕事していることだった。自分の子どもの入学式に出席してバッシングを受ける日本の学校じゃ見れない光景だと思った。

 

家に戻り荷物を軽くして買い物とウォーキングへ。

帰り道、イード(犠牲祭。羊を神様に捧げる祝祭。期間中は祝日になり毎日羊が捌かれるそうだ。)が近いからか近所の家の軒先に羊が二頭繋がれていた。

羊もいい迷惑だよなぁなんて眺めていたら、その家の子どもとお婆ちゃんが「寄ってけ寄ってけ」と手招く。

写真を撮っていいか許可を貰い、話をする。お婆ちゃんが「ガフワウシャーイ?(コーヒーにするか?紅茶にするか?)」というので、すぐ行くからいらないと伝える。

長居するのが少し怖かったのもある。

一番上のお姉ちゃんが「ハディーヤティー、ハディーヤティー」(私に何かプレゼントはないのか?)ときた。ないよと言うと、「シャンティティック」(そのカバンでいいからくれ)「ダメだ。これは私のカバンだ。」

そーいえばと、ファラーフェル屋のおじさんにタダで貰った(またかよ。)ファラーフェル(ヨルダンではどこにでもあるコロッケのようなもの)が5個手に持っていることに気づいた。

「ファラーフェルなら一つあげるよ。」と言ったら急に真顔になって「そんなもんいらん。」的な返しをされた。そりゃそうだ。飽きるほど食べているだろう。

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 (この青い印はなんだろう。同じようにもう一頭にもあった。)

 

家に戻りほっとして鍵を開けようとした瞬間、手に持っていたファラーフェルを落としてしまった。

と思ったら嫌な音がして下を見たら、手に持っていた卵を落としてしまった…。はぁ〜こりゃこりゃ。

しかも袋が破けてしまったため一人後始末をしていると、買い物から帰ってきた大家のマーマに「どうしたの?」と聞かれる。

「マーフィームシュキラ(なんでもないさ)」とうそぶく声がなんとも情けなく廊下に響いた。

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(これが生活ってもんさ。)